【短編】そばにいるよ。
「待っててね、コロン。今、行く……!」
気合いを入れ直し、1歩を踏み出す。
すると、ブーツのつま先に何かが当たった、カサッという音がして、視線を下に向けた。
と、夜の間も降っていたらしい雪で、かなり分かりにくくはなっているものの、コンビニの袋のような、白い半透明のビニールの袋が雪の中から顔を出し、中を覗いてみると、ハンドクリームばかりが10個近くも入っていて、何やら、レシートのような細長い紙もあるようだ。
「誰かの忘れ物……?」
まさかサンタなわけはないし、かといって、レシートから買った人物を見つけ出せるわけもないのだけれど、とりあえず、袋からレシートとおぼしき紙を取り出し、見てみることにする。
もしこれが、誰かがサンタになってプレゼントを届けたつもりのものだったとしても、あまりに雑すぎて、逆にサンタに失礼だ。
忘れ物だと推測するほうが、現実味もあり、サンタにも失礼にならないのではないかと思う。
「えーっと、裏には何か書いてあったりしないかな。……んー、ん!? 『やる!』って。何よこれ、ナオの字じゃん。てか、これだけ?」
しかし、ハンドクリームを買った人物は、見知らぬ誰かの忘れ物でも、もちろんサンタでもなく、ただの隣の幼なじみ、ナオだった。