【短編】そばにいるよ。
「じゃあ、今出た意見をもとに、ちょっとずつ調整していこうか。また明日、作ってみよ」
「そうだね」
「うん」
数十分後。
ほかの部員の試食の感想も、穂乃花やあたしとおおむね同じで、スポンジとクリームの配合をを重点的に詰めることで意見がまとまり、今日の部活はこれで終わりとなった。
ホワイトボードには、今日の反省点が細かく書かれていて、「また明日、作ってみよ」と場を締めた部長の莉乃は、特に気合いが入った様子で、それを部活日誌に書き写している。
「頑張って美味しいケーキ作ろうね、莉乃!」
「うん!頑張ろー!」
声をかけると、莉乃は、おー!と腕を上げる。
クリスマスケーキの出来で、それから1年の家庭科部の評価が決まるようなものなので、あたしが思っているより、部長の重圧は重いはず。
穂乃花とあたしも、つられて、おー!と腕を上げながら、できる限りサポートするよ、と、一緒に乗り切る覚悟を決めたあたしだった。
と。
「そうだ、ナオ君にも試食してもらってくれるかな。男の子の意見も取り入れたいし」
ふっと思い立った様子の莉乃にそう言われ、あたしはしばし、余っているケーキを見つめた。