【短編】そばにいるよ。
ナオは、無類のお菓子好きだ。
自分の部屋にも、学校にまでお菓子を持っていっていて、飲み物はココアやいちご牛乳といった甘いものばかりを好んで飲んでいる。
莉乃の「男の子の意見も取り入れたいし」という言葉の裏には、ナオが、うまい!と合格点を出せば、クリスマスケーキの販売は必ずうまくいく、という、ある意味、絶対の信頼を置いているからで、ほかに他意はない。
……と、思う。
例えば、ケーキを差し入れて仲直りしてね、なんて気を使ってくれている、とか。
いや、実際、莉乃はそういう気遣いをさり気なくできる、とっても素敵な女の子だ。
けれど、あたしとしては、今はそんなに会いたい気分ではなく、また「バカナ」とやじられるのだろうと思うと、なかなか気が進まない。
自分のほうがバカなくせに、棚上げなのだ。
「どうかな、カナ。ナオ君に持って行かないなら、もったいないけど捨てなきゃならなくなっちゃうの。みんな、お腹いっぱいなのよ」
「……うん。じゃあ、持ってく」
「ありがとう、カナ。すぐに箱に詰めるから、ちょっと待っててくれる?」
「うん」
捨てることになる、というのは、食品を扱う者にとっては、なかなか効く言葉である。