スクランブル・ジャックin渋谷
大勢の人たちが、一心不乱になって踊っている。汗だくだ。誰も、止めようとはしない。誰にも止められない。

 中止してチョッとトイレ休憩や、水でも飲みに行けば、この場所を奪われてしまう。

それは許されない。体力の続く限り、倒れるまで踊り続けよう。皆、そのような考えを抱いているようだ。

 宏の先輩たちが、群衆に紛れてモニターを見ていた。
    ○    ○

 手と手を取り合って、チークダンスを踊る宏と博恵。
 宏は、さりげなく博恵の耳元でつぶやいた。

宏「博恵。ボーナスが入ったら、俺、警察官辞めるわ…」

博恵「ううん。宏、警察官を辞めないで…」
宏「はっ?」

 あれほど、警察官の仕事を嫌っていたじゃないか。

危険な職業の男性とは、結婚したくなかったじゃないのか。その言葉を信じて、自分は退職を考えたのだぞ。

博恵「派出所だって、立派な仕事じゃない…」

沈黙する宏。博恵の考えていることが、良く分からない。急に態度を変えている。返す言葉が、見つからない。

我がままで、気まぐれな博恵の気持ちに、振り回されている宏であった。

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