スクランブル・ジャックin渋谷
ハチ公前広場
台座に座ったハチ公の銅像がある。

左の小さい牙が、ピカッと光った。

突然、2本足で立ち上がる。両手を広げて、背伸びをする。首を回し、肩の凝りをほぐす。
ニタッと微笑む。

右手で、木立の枝をつかんでは1本を折る。それをステッキ代わりにして、踊り出す。
軽やかな足踏みの、タップダンスだ。

タップを台座の上で披露する、ハチ公。

ステッキを上に放り投げたり、台座にぶつけては、その跳ね返りで受け取ったりする、ステッキアクションを駆使する。

笑顔で踊っている、ハチ公。シッポを大きく、振っている。
周囲の木立も、左右に揺れながら楽しそうに踊っている。

ステッキを天高く上げる、ハチ公。
天高く舞う、ステッキ。

ハチ公、右手を差し出して受け取ろうとする。
しかし、うかつにも落としてしまう。

ハチ公のご主人、上野英三郎(53)が、黒のコートを着用し、山高帽をかぶった姿で、渋谷駅から現れた。

ご主人を見て、大喜びをするハチ公。
台座から飛び降りて、涙を流して英三郎に抱きつく。ワンワン。
英三郎の頬を舐めまわす。

英三郎も、涙を流しながら愛犬ハチ公を抱きしめる。2人は今、長い年月を経て再会を果たすのであった。

大正末期、上野英三郎は、現在の東京大学に農業土木を創設した、教育者であった。
駒場で急死してからも、ハチ公は旧渋谷駅にて、主人の帰りをただひたすら待ち続けたのでした。

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