スクランブル・ジャックin渋谷
ハチ公前広場の周辺
コンクリートで固められた、渋谷駅がある。
木立に囲まれた、ハチ公の銅像がある。

そのハチ公前には、地下道への入り口がある。
またハチ公前には、派出所もある。以前あった場所から、移転したようだ。

2基のモニターA・Bが、室内からも良く見える。
9台の公衆電話ボックスがある。みんな、電話をしている。

その隣に、露天の本屋さんがある。ひ弱なおばあさん(74)が、本を売っている。
「渋谷ふれあいマップ」の看板がある。

その下に居座って、6人の中年ホームレスが、昼間から焼酎やビールを飲んで酔っ払っている。

派出所
ドアの内側から、カーテンがひかれてある。窓には、「只今、外出中」と明記された貼り紙が貼ってある。

渋谷駅なのに、警察官は誰もいないようだ。

派出所内
扇風機が回っている。クーラーが壊れているようだ。3台の机には、パソコン1台とFAX電話機とアルバイト情報誌が1冊ある。

巡査の宏(31)が、机に向かって「婚姻届」に自分の箇所だけに書き込んでいる。
宏は、生の絞った「レモン水」を飲んで、口を潤している。

他に、署員はいない。宏だけだ。宏1人残して、皆緊急の事件に駆り出されているようだ。

宏の回想
宏と恋人の博恵(23)が、向き合っている。

博恵「あたし、警察官や消防士や自衛隊員なんてダメ。結婚したら毎日毎日心配で、もう耐えられない。

宏はどうせ高卒なんだから、出世なんか望めないんでしょう。最近はノルマもこなしていないし、給料も上がらないし…」

宏「俺の課長は、東大卒で年下だぜ。そんな奴に毎日どやされて、こき使われているんだぜ」

博恵「宏―。警官なんか辞めちゃいなよー。一生、派出所勤務で終わるつもり…?」

宏「…」

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