スクランブル・ジャックin渋谷
隊長、周囲を見渡すと、踊っているのは道産子たちではなく、身体不自由者たちだった。

しかし、顔も服装も変わっていない。今まで、健常者が踊っていたのに、突然、身体不自由者になっていた。

ありえない。目を疑う、隊長と隊員たち。
身体不自由者、101人が踊っている。

車イスの人、片足を切断した人、知的不自由者、片腕の人、盲目の人、難聴者、小人症(こびとしょう)の人、その他大勢の身体に不自由な人たちが踊っている。

踊りとはいえないが、彼らは彼らなりに、身体を動かすことで一生懸命披露している。
車イスを巧みに駆使して躍る、男性。

踊っている、女性の知的不自由者。
義足をつけて踊っている、男性。

a子が、楽しそうに踊っている。隊長は、a子を逮捕したいが、多少戸惑っている。

法律に従えば、逮捕しなければならない。だが人道的には、良心の呵責で悩まされている。

隊員たちも、手錠を手にしているが、迷っている。

黒子A「おーい、逮捕するつもりか。道交法違反かもしれないけれど、こんなに楽しそうに踊っているのに、少しくらいは大目にみてやれよー」

盲目の老人が、杖をついて踊っている。
統合失調症の男性が、踊っている。

右足骨折の女性が、松葉ツエを使って踊っている。
てんかんを発症させてまで踊っている、男性。

大勢の身体不自由者が、自分なりの個性ある踊りを踊っている。

隊長は、踊るa子の右手首に、手錠をかけようとする。その手が、プルプルと震えている。

生き生きと踊っている、a子。
黒子A、じっと隊長を睨みつけている。

隊員たちも、隊長に従って手錠をかけようとしている。

歩道上の観衆は、熱いまなざしで機動隊たちを睨みつけている。
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