スクランブル・ジャックin渋谷
◎20代のカップルが、踊っている。新郎は、ツギハギだらけの薄汚れた、タキシードを着ている。

ズボンの丈も短い。靴も汚い。貧乏そうだ。現在無職のフリーターだ。

そこへ、新婦の父親が現れる。新郎の胸ぐらを、きつく握り締める。娘を奪われて、怒っている。じっと、新郎の目を睨みつける。

父親「娘が欲しければ、俺を越えてみろ」
新郎は、今にも泣き出しそうだ。

新郎「無理です。越えられません。勘弁して下さい。総理大臣…」

 父親の職業は、総理大臣だった。総理大臣を越えられる職業は、そうそうない。

周囲に、5人ほどの警護官がいる。

無理難題な条件を突きつけられて、困惑している新郎であった。

父親「お前には、娘はやれん。来い」
父親は、新婦の右手を握って連れ出そうとする。

新婦「いや、やめてお父さんっ!」

新婦は貧乏でも、この新郎を愛しているようだ。この絆は、父親でも変えられない。

その時、新郎は勇気ある行動に出た。いきなり、父親の左頬を殴り出した。路上に倒れて、気絶する父親。

警護官5人は、突然背中を向けて、見てない振りをする。新郎を逮捕しようとはしない。総理大臣を嫌っているようだ。

新郎の両手を握って、その強さに改めて惚れ直す、新婦。

新郎は、総理大臣を相手に、「フン」とあしらった。新婦の両手を握ってまた、楽しそうに社交ダンスを踊るのであった。

気絶した総理大臣は、5人のSPに連れられて、交差点から出て行くのであった。
< 38 / 108 >

この作品をシェア

pagetop