スクランブル・ジャックin渋谷
宏、大きく背伸びをしてアクビをする。

宏は、ドアの前に立った。カーテンを開け、貼り紙をはがした。窓から、射す日差しが暑く、ハンカチで額の汗を拭った。外の道行く人々を眺める。

信号待ちをしている人で、ふくれあがっている。

宏「何で、こんなに人が大勢いるかなー」

交差点の中を、自動車が行きかっている。

モニタービルA
モニターAから、「ありがとう。渋谷駅職員編」が流された。

「渋谷駅の職員さん。先日酔った勢いで絡んでしまって、ごめんなさい」

「ホームから転落した時、迅速に助けてくれてありがとうございます」

「飛び込み自殺を考えていました。看板を見ると、死んだ後の損害額が多額なのを知って、自殺をあきらめました」

など、色々な思いを託して、渋谷駅の職員に対するお礼の伝言を流していた。

派出所内
宏は、腰ベルトにある拳銃を素早く抜いては構え、しまっては素早く抜いた。西部劇の練習でも、しているみたいだ。

銃口に向かって、フッと息を吹きかけた。
FAX電話の音が、また聞こえた。

宏「ハイ、ハチ公前派出所です」

博恵の声「宏ー、あたしー」

宏「何だ、博恵か。バイトはどうした?」

博恵の声「今、お店暇なの…」

宏は、会話をしながら拳銃の練習をしている。

宏「お前な、勤務中に電話はするなって言ってあるだろう」

博恵の声「どう、転職先みつかった?」

宏「ぜーんぜん。ろくな仕事がないよ」

博恵の声「ネエネエ。今度の土曜日、クラブに行かない? 近所に出来たの。パーッと、踊ろうよ」

宏「ダンスは、嫌いだって言っただろう」

博恵の声「いいじゃない、たまには。教えて上げるから、行こうよ」

宏、拳銃を人差し指でクルクルと回転させてから腰ベルトにしまった。
宏「いやーだ。土曜日は、朝から並ばないといけないの」

宏、素早く拳銃を抜いて銃口をドアに向けた。

博恵の声「どうせ、またパチンコでしょー」
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