スクランブル・ジャックin渋谷
その時、派出所のドアが突然開いた。フランス人のピエール(27)が入ってきた。
銃口が、ピエールの腹部に当たった。驚いて、両手を挙げる。

宏、偶然の出来事に、銃口をピエールの腹部に当てたまま、立ち尽くしている。
冷や汗をかいて驚愕する、ピエール。

宏、慌てて拳銃を腰ベルトにしまう。

博恵の声「宏―、聞いているのー?」

ピエール「あの、インド料理のインドラはどこでしょうか?」
ピエールは、震えながら質問をした。

宏「あそこの道を右に曲がって、真っ直ぐ行って下さい」
チョット、不器用にも愛想悪く簡単に答えた。

ピエールは、ドアを慌てて閉めて出て行った。

博恵の声「チョットー、聞いてんのー?」
ほっと、一息する宏。

博恵の声「宏―、夕方の5時、パチンコ店へ向かえに行くから、待っててね」

宏「アホ、5時に、終わるわけがないだろう」
宏、窓越しに上空を見上げる。青空だ。

その上空には、白い尾を引いた小さな彗星が見えた。弟彗星が、交差点に向かって降下しようとしているようだ。

降下してくる彗星を眺めている、宏。

博恵の声「入店料、稼いどいてね」

宏「おい、博恵。仕事が終わったら、こっちに寄ってくれないか…」

ブチと、一方的に電話を切られる。
宏、「ニャロー」とつぶやいて、ぶち切れる。

その後、ドアを開けて外の空気に触れてみる。都会の汚い空気が、肺の中をにごらせる。

< 6 / 108 >

この作品をシェア

pagetop