スクランブル・ジャックin渋谷
道代は、インド人男性Aと一緒に踊っている。

 全員、相対立する敵同士が、嫌々手を握って踊っている。

 マスターとリーダーも、手を握って嫌々踊っている。踊っているインド人とパキスタン人たち。

 肩を左右に揺らし、リズムを取り、軽く手を叩いて、歩道上の観衆たちも平和な世界を見学している。

いつしか、全員が楽しそうに踊る。笑顔がよみがえってきた。

道代とインド人男性Bが、楽しく踊っている。道代は手を離して、一人で円陣の中央に駆け寄った。

 右手の人差し指を高く上げる、道代。叫んだ。

道代「世界は、一つ!」

 道代の胸の白いTシャツには、「私は自然科学を崇拝します」という文字を、約160人に見せつける。

 人類が崇拝する宗教は、多すぎる。それゆえに、争いが発生するのだ。神を、1つすれば良いのだ。

道代が望む平和とは、世界でたった1つの新たなる「神」を創世し、崇拝させることにある。それが、「自然科学」だ。

全人類が、他の神を捨てて、世界で地球上で大宇宙で、ただ1つの神である「自然科学」を崇拝すれば、世界に平和が訪れるかもしれない。そう、信じるしかない。

右手を高く上げる、マスターとリーダー。
約160人全員が、右手を高く上げる。

全員「世界は、一つ!」

 道代が指す右手の人差し指の先には、上空にある兄彗星を指していた。

上空
 尾が消滅して、球体となって滞空している兄彗星。
 白く光り輝いている。

< 66 / 108 >

この作品をシェア

pagetop