スクランブル・ジャックin渋谷

第十五章 ピンクジャック

モニタービルA

 2人組の新人歌手、「ピンク・ジャック(ヒロエ・ミチヨ)」のプロモーションビデオが、画面に流れる。宣伝用だ。
 
 歌って踊る、ヒロエとミチヨ。
 踊っている、ヒロエの笑顔。

 ミュージックOが、流れる。

交差点
 踊っている、博恵の笑顔。

 大勢の通行人たちが、変な目つきで踊っている博恵を見ている。

頭のおかしな女性が、交差点の中央で、勝手に1人で踊っていると思っているようだ。係わり合いをもつのは、止めよう。

 1人で、平然と踊る博恵。自分の世界に浸っている。

 宏、周囲を見回すと、正常な渋谷に戻っていることに気付く。恥ずかしさのあまり、少しずつ後ずさりをして、他人の振りをする。

 俺は、この女性とは知り合いでも何でもない。赤の他人だ。

博恵の迫力ある、切れのある踊りは、本場アメリカのブロードウェーで鍛えたみたいだ。

 基本は、クラシックバレエみたいだ。プロのダンサーがみれば、どこかに、その奥ゆかしさが見え隠れしているのが理解できる。

 柔軟な動き、しなやかさ、身体が柔らかい。基本は適格で、忠実だ。その反面、創造力・応用力が抜群に優れている。

 誰の真似でもない、自分のオリジナルの踊りをかもし出している。

 運動能力・運動神経も、誰にも負けない。24時間踊り続けるだけの体力・持久力が、ありそうだ。

 日頃から、筋力トレーニングをしているみたいだ。ダンスレッスンができなくても、イメージトレーニングは欠かせない。
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