スクランブル・ジャックin渋谷
宮益坂通り
 その通りで、大勢の人たちが乱舞している。

 停車している自動車たちが、クラクションを鳴らしている。
 一部の運転手たちは、動かないことに腹を立てているようだ。

 軽四トラックが、停車している。青年がドアを開けて降りてくる。
 頭に、「渋谷命」と書かれたハチマキをして、その場で踊りだす。

 全然、踊りになっていない。タコ踊りのようだ。

 停車している自動車たち、一斉に左右のドアが開いた。走行をあきらめた運転手や同乗者たちが、一緒になって踊り始め出した。

 思い思いの、独自の踊りを披露している。
 ビルから出てきた人たちも、その通りで踊りだした。

たった1人から、感染が拡大した。ウィルスから排出された毒素は、幸せな快楽を大勢の人たちに与えた。

道路上で踊っている人たちは、もう狂気と活気に満ちている。

 今、路上を占領しなければ、もう二度と渋谷で踊ることができない。この機会を、逃すわけにはいかない。

 道路交通法違反か、騒乱罪か。法律違反など、知るか。

大勢で踊れば、法律も日本国家も怖くない。警察や機動隊など、怖くない。一握りの日本国民が、今1つとなった。
3万人になった。

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