白銀に散る
母の遺した書籍は、特にジャンルが決まっている訳ではなく。物語に随筆、教科書まで揃っていた。
だからある程度の『普通の事』は知っているし、『常識』も知っている。
でも、使えない。『普通』も『常識』も、知っているのに使えない。使えないなら知らないと同じ。意味がない。
それをわかった上で、私は今日も本のページをめくる。
知りたい。
普通って何? 常識って何? どんなことをすれば、私は他人から嫌われないの? 怖がられないの?
知りたい。
普通の人は、どんな感情を持っているの? こんな時、普通の人ならどんな反応をするの?
役に立たない知識でも、知りたい。近付きたい。