さよならでも愛おしい

 若ちゃんの部屋から何かが雪崩れるような壮大な物音と悲鳴が聞こえ、静かになったかと思うと不機嫌な顔で用意を済ませた若ちゃんが出て来た。

 「雪崩れ?」

 「雪崩」

 「片付けとくよ…っと…嘘、大変だね、片付け」

 片付けるためには若ちゃんの部屋に入らなければならない。

 今はもう、そんなこと出来ないんだ。

 きっと酷い顔をしている俺を仰ぎ見て、若ちゃんは笑顔で玄関へ向かった。

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