さよならでも愛おしい

 昨日のように泣いてはいないけど、その足取りの軽さに恐怖が湧き上がる。

 「行ってきます」

 「…帰ってくる?」

 留守番する子供のような俺に、若ちゃんは笑った。

 「早めに帰ります」

 俺の前で閉まった扉に孤独感だけが行き場所を失ってさまよう。

 きっと、若ちゃんは賢いから切り替えも上手いんだ。

 未練がましく過去に縋る俺は、本当に女々しい。

 嫌気がさし自己嫌悪に陥りながらリビングに向かった。

 
< 16 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop