さよならでも愛おしい
昨日のように泣いてはいないけど、その足取りの軽さに恐怖が湧き上がる。
「行ってきます」
「…帰ってくる?」
留守番する子供のような俺に、若ちゃんは笑った。
「早めに帰ります」
俺の前で閉まった扉に孤独感だけが行き場所を失ってさまよう。
きっと、若ちゃんは賢いから切り替えも上手いんだ。
未練がましく過去に縋る俺は、本当に女々しい。
嫌気がさし自己嫌悪に陥りながらリビングに向かった。