さよならでも愛おしい

 俺はきっと、自分勝手だから悲しい顔を沢山見せたはずなのに。

 笑って答えてくれた彼女の涙に、自然と足が動いていた。

 うずくまる彼女の前に影を作り、抱きめる。

 震えた彼女の動きが止まり、顔をあげようとしたのを制止するように呟いた。

 「今だけ、今だけ抱きしめさせて。今だけ、若ちゃんの一番でいさせて。お願いだから、一人で泣かないで。お願い、俺がいることを忘れないで。別れても、離れ離れでも、俺のこともう好きじゃなくていいから、別れてもいいからお願い。一人で泣かないで。俺がいなくても幸せになってよ。笑顔でいて」


 

 
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