運命みたいに恋してる。
あたしは、大きく息を吐きながら脱力してしまった。


なんというか、とても柿崎さんらしい。


さすがは通りすがりのドブに落ちた女の子を、背負って家まで送り届ける人だ。


お人好しを絵に描いたような性格だもんなぁ。


危険だわ。気をつけないと、あっという間に身ぐるみ剥がされそう。


「でもなぁ。兄貴が使命感に燃えたところで、あの店はいろいろ悪条件なんだよ。立地条件も店構えも」


「あぁ、うん。それはそう思う」


大きな通りに面しているわけでもないし、駐車スペースもない。


人通りが少なすぎるんだよ。しかもあの外観じゃカフェだなんて誰も気づかないよ。


「金がなくて外装まで手が回らなかったんだ。でも親友から預かった大切な店を、兄貴は自分の手で軌道に乗せたいんだよ」


「そして親友が帰国する際には、胸を張って出迎えたい。ってことね?」


「そう。兄貴にだって男のプライドがあるのさ。一海さんが料理の面で協力してくれてんだけど、なかなかなぁ」


「お姉ちゃんが?」
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