運命みたいに恋してる。
お店の外へ出て、思い切り背伸びして深呼吸しながら、胸の中の空気をぜんぶ吐き出した。


こうすると、自分の体から黒くてモヤモヤしたものが一気に放出される気がして、気持ちいい。


「今日もお疲れさん」


大地が笑顔でねぎらってくれて、あたしも笑顔でお返しする。


「そちらこそお疲れ様でした。今日も柿崎さん、素敵だったなぁ」


柿崎さんとこうして一緒にいられるようになったことが、すごく嬉しい。


毎日幸せで、柿崎さんとおしゃべりしている間中ドキドキして、足元はふわふわする。


苦しみに耐えるだけの毎日じゃなくなって、たしかにその点では楽になったと思う。


でも同時に、あたしはお姉ちゃんの笑顔をまともに見られなくなった。


お姉ちゃんの姿を見るたびに思い知るんだ。あたしは、姉を裏切っているって。


そんなの最初からわかりきって始めたことだけれど、やっぱりつらい。


柿崎さんのそばに居られる幸福感と、いつかこの人と結ばれるかもしれないっていう期待感と、大切な姉を裏切っている罪悪感。


さまざまな感情が入れ替わり立ち代わり、あたしの心をサンドバッグみたいに叩きつける。
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