運命みたいに恋してる。
◇◇◇◇◇◇


次の日の放課後。


あたしと大地は、学校の印刷室に忍び込んでいた。


「大丈夫? 誰も来ない?」


「大丈夫だ。今のうちに早く」


コソコソと大地が印刷機を動かし始めて、あたしは急いで用紙をセットした。


これは、お店の宣伝のためのチラシ作り作業。


当然、業者に依頼するお金なんてないから、あたしたちの手作りだ。


ホームセンターで買ってきた用紙を使って、学校の印刷機で印刷する。


インク代と電気代はチョロまかしてることになっちゃうけど、愛のためなの。お願い見逃して。


その代わりに今度の学園祭の時に、バザーの売り上げで貢献するから。


たいした枚数でもないから、あっという間に作業は終了した。


刷り終わったチラシをそれぞれ胸に抱えて、誰にも見られないように印刷室を出た。


「お前のチラシ寄こせよ。俺が持ってやるから」


「いいよ。そんな重い物でもないし」


「いいから。一緒に歩いている女に荷物を持たせるわけにいくかよ」


そう言って大地は強引にあたしの手からチラシを取り上げた。


大地って紳士的というか、『男子たるもの弱きものを守らねば』的な、男らしい考えの持ち主なんだ。


こういうの、ちょっとキュンとする。態度や口調はぶっきらぼうだったりするけれど、ちゃんと女の子扱いしてくれることが、実はうれしかった。


大地の魅力は顔だけじゃない。


ささいな仕草や行動から、心根の優しさを感じることが本当に多いんだ。


そのたびにあたしの心は、ひなたぼっこしているみたいにホッコリと温かくなった。
< 115 / 267 >

この作品をシェア

pagetop