運命みたいに恋してる。
「ところで、チラシ配りって本当に効果あるのかなあ?」


「地味な作業だけど、大事な仕事だぞ? まあ、もっと効果的なチラシの配布方法があればいいんだろうけど」


うーん。効果的な配布方法ねぇ。


前にご近所に配ったときは、ぜんぜん反応なかったし。


きっとインパクトが足りないんだよね。インパクト、インパクト……。


「あ! そうだ!」


「なんだ? どうしたんだ?」


急に声を上げて立ち止まったあたしを、大地が怪訝そうな顔で見た。


考えを悟られたくなくて、あたしは急いで素知らぬふりをする。


「なんでもない。ところでそのチラシ、やっぱり半分ちょうだい。今回はさ、効果的な場所を考えて、それぞれが好きな場所で配ろうよ」


そう言うなり、あたしはチラシを大地から強引に半分もぎ取って走り出した。


「あ、おい! 七海!?」


「配り終わったら店で会おうね!」


「おいって! 急にどうしたんだよ!?」


大地の声を背中で聞きながら、あたしはニンマリした。


いいこと思いついちゃったもんね! やっぱり宣伝ってのは、劇的なインパクトが必要なのよ!


大地には真似できない、お姉ちゃんにも真似できない、あたしにしかできない宣伝方法があった!


そうと決まれば急がなきゃ。用意に時間がかかるからね!


胸を弾ませ、廊下を走るあたしの足取りは羽が生えたように軽やかだった。


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