運命みたいに恋してる。
そしてその十五分後には、いつもの物置小屋横に座って、すべての事情を花梨ちゃんにぶちまけていた。


まるでダムの決壊みたいに、言葉と感情が次々と溢れ出す。


花梨ちゃんは、そんなあたしの感情の放流を黙って受け止めてくれていた。


「あたし、自分が情けない。あたしには、柿崎さんっていう運命の王子様がいるのに。しかも実の姉から、その柿崎さんを奪い取ろうとしていた真っ最中なのに」


なのに、べつの人に恋しちゃった。


不誠実。浮気女。最低女。そんな見下げた単語が、ぜんぶあたしに当てはまる。


「こうなることがわかっていたから、あたしは反対したんだけどね」


花梨ちゃんの言葉に、あたしは抱え込んでいたヒザから顔を離した。


「花梨ちゃん、まさかあたしが大地を好きになることを予測してたの?」


「いや。さすがに七海ちゃんがそんな悪趣味だとは知らなかったもん。あーんな男の、どぉーこがいいんですかねぇー?」


……花梨ちゃんてば、ほんとに大地のこと毛嫌いしてるんだね。あの出会いじゃ、しかたないけど。


「ただ、七海ちゃんが本当の恋をしたときに苦しむだろうとは思ってたよ」


「本当の恋?」


あたしは柿崎さんに、もうすでに本当に恋をしてたよ?


十年もの間、忘れられないぐらい真剣な本当の恋を。
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