運命みたいに恋してる。
「七海ちゃん、大地に連絡してみて」


「だ、大地!? なんで!?」


「この状況で、たぶんお財布も持っていない一海さんが頼る人は……」


「そうか! 柿崎さんだ!」


大地に電話したら、大地はすぐに電話に出てくれた。


『七海か? 悪いけど今ちょっと忙し……』


「大地! お姉ちゃんがお母さんと大ゲンカしてお金も持たずにタクシーに乗ってたぶんそっちに行くはずだからなんとかしてお願いー!」


息継ぎもせずに一気にまくしたてると、大地の大きなため息がスマホ越しに聞こえてきた。


『そっちもか。うちも今、兄貴の結婚話で親父と大バトル絶賛展開中だ』


そっちも修羅場ぁ!?


その絶賛展開中に、あの状態のお姉ちゃんが飛び込んだら、火災現場に爆弾持って突っ込むようなもんじゃないの!


あっちもこっちも待ったなしの緊迫した状況に、あたしの顔からサーッと血の気が引いた。


「と、とにかくお姉ちゃんがそっちに行ったら、すぐ連絡して!」


『わかった』


ああぁ、どうしよう。どうなるんだろう。


電話を切って、心配のあまりその場に崩れ落ちそうになっているあたしに、花梨ちゃんが青い顔で言った。


「七海ちゃん……。後ろ髪が引かれすぎてハゲそうなくらい一海さんのことが心配だけど、あたしはひとまず帰った方がよさそう」


これ以上家庭の事情に関与するわけにいかないと、気を遣ってくれたんだろう。


事態が動いたら連絡する約束をして、花梨ちゃんは帰って行った。


そしてあたしとお母さんは、ソファーに座って状況が動くのを待った。


座っていても心の中がジリジリと焦燥感に苛まれて、ぜんぜん落ち着けない。


ひたすら神様と仏様に祈っていたら、テーブルの上に置いていたあたしのスマホが振動して、体も心臓も跳ね上がった。
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