運命みたいに恋してる。
「ケガはしていない? 捻挫とか大丈夫?」


「大丈夫。そこまでヘタに転んでねえから。制服は瀕死状態だけど」


彼はドロだらけになった自分の制服を、情けなさそうに見ている。


あたしはスカートのポケットからハンカチを取り出そうとしたけれど、この汚れ具合はハンカチ程度じゃなんの役にも立たない。


困ったな。着替えなんか持ってないだろうし。


この人、こんなドロだらけの格好で受験して、面接受けるの?


いくら人間は中身で勝負とはいえ、これじゃあんまりかわいそうだし。うーん……。あ、そうだ!


あたしは自分のマフラーを外して、ザッと折りたたんで、それで彼の制服のドロ汚れをゴシゴシ拭き始めた。


イケメン君は驚いて、一歩後ろに引きながら目を丸くしている。


「お、おい?」


「なかなか汚れが取れないね。水で濡らした方が取れるのかな?」


「よせって。そんなことしたら、あんたのマフラーが汚れるだろ」


イケメン君がマフラーを掴んで離そうとしたから、あたしは首を横に振った。


「そんなこと気にしないで。災難だったけど、物は考えようだよ。これで悪い運をぜんぶ使い果たしたろうから、きっと合格できるよ!」
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