運命みたいに恋してる。
――ガタン!


急にイスが動く音がして、あたしはハッとした。


見れば、柿崎さんが立ち上がって、お母さんとおじさんを見ている。


「どんなに反対されようと、僕は一海と結婚します」


背筋を伸ばして立つ柿崎さんの表情は、真剣そのものだ。


こんな強気な柿崎さん、見たことない。


泣き腫らした目で柿崎さんを見上げていたお姉ちゃんも、同じように立ち上がって、きっぱり言い切った。


「あたしは、なにがあっても拓海と結婚します」


そして柿崎さんとお姉ちゃんは手を握り合い、お互いの顔を見つめ合う。


ふたりの気迫に圧倒されたお母さんたちは、しばらくポカンとしていたけれど、みるみる顔が怒りに染まっていった。


「一海! あんた、いつからそんな我がままになったの!?」


「お母さんに許してもらわなくても、あたしは結婚します。法的にはなんの問題もないのだから、口出ししないでください」


「なんてことを言うの!?」


お母さんは明らかにうろたえて、やがて柿崎さんをキッと睨みつけた。


「一海はこれまで親に逆らったこともない、とてもいい子だったのに! あなたが一海をこんなふうに変えてしまったんだわ! やっぱりこんな結婚、認められない!」


言うだけ言ったお母さんは、プイッと顔を背けてしまった。


黙ってその様子を見ていたおじさんも、大きくため息をついて、柿崎さんを説得し始める。
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