運命みたいに恋してる。
「お母さんたら、そんな失礼なことを言わないで!」


「あんたたちが夢ばかり見てるから、言わなくてもいいことをお母さんが言わなきゃならないの! 柿崎さんは、病気がちでお金のかかるあんたを、どうやって食べさせていくつもりなの⁉︎」


お姉ちゃんは悲しそうな顔をしてうつむき、唇を噛んだ。


お母さんの話は下品に聞こえるかもしれないけれど、あたしもお姉ちゃんも、身をもって知っている。


あたしたちを育てるために、お母さんがどれほどお金で苦労したかを。


愛はお金じゃ買えないけど、人間が生きていくためには、お金は絶対に必要なんだ。


ご飯は、愛じゃ買えないから。


「一海を安心してまかせられる経済力のある人じゃなきゃ、結婚させられないの。悪いけど柿崎さん程度の男じゃ無理ですよ」


「桜井さん。それは聞き捨てなりませんね。人の息子に対してなんて失礼な言い草ですか」


おじさんが明らかに怒りを含んだ声で反論してきた。
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