運命みたいに恋してる。
「父さんはな、拓海に普通の娘さんと結婚して、普通に生きて欲しいんだよ。ただ、普通を望んでるだけなんだ」


やたらと『普通』を強調するおじさんのセリフに、お母さんが噛みついた。


「うちの一海が『異常』だとでもおっしゃるんですか!?」


そうだ! お姉ちゃんが普通じゃないとでも言いたいのか!?


許さん! めちゃくちゃ失礼なオヤジめ!


「それじゃ、おたくの娘さんが普通の体だとでも思っているんですか!?」


「うちの子は普通ですよ!」


「そんなふうに思っているのは、あなただけですよ! あなたの娘は欠陥品だ! 普通じゃない!」


売り言葉に買い言葉とはいえ、信じられない暴言にお母さんは真っ青になった。


あまりの怒りで、肩が発作を起こしたようにブルブル震えている。


「こ、この……この……」


「このクソオヤジ! 食らえ天誅ー!」


部屋中に響きわたる怒声とともに、オヤジの身体が勢いよく横倒しになって倒れた。


巻き添えになったイスが、派手な音をたてて引っくり返る。


いきなりの出来事にみんな呆然と口を開いて、その光景を凝視していた。


その光景。つまりあたしが……。


思いっきりオヤジの背中を蹴り飛ばした右足を、宙で固定している姿を。
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