運命みたいに恋してる。
『なんだよ。やたら素直だな。駆け落ちのショックで毒気が抜けたか?』


「毒なんか持ってないもん。フグじゃあるまいし」


『そういやお前、ちょっとフグに似てるなあ! 真ん丸な顔とか!』


「なんだとぉー!?」


あたしと大地は、大きな声で朗らかに笑い合った。


そしてあたしは、ますます大地を好きになる。


好き。好き。好き。


好きだよ、大地。


「ねぇ、大地……」


『ん?』


……好きだよ。


その言葉は、心の中だけでつぶやいた。


「電話ありがとう。あたし、もう休むね」


『おう。また明日、学校でな』


「うん。おやすみなさい」


電話を切って、あたしはスマホをギュッと胸に抱きしめた。


ため息を繰り返し吐き出しても、熱を帯びた胸の切なさは高まる一方だ。


好きって言ってしまいたい。


でも、言えない。


お姉ちゃんに恋してる大地には、好きなんて言えない。


それでもまた明日、大地に会えると思えば、心は喜びに満ち溢れる。


湧き上がる幸福感。そして叶わない想いへの切なさと、悲しみ。


こんな複雑な感情は生まれて初めて。お姉ちゃんのことも心配だし、あたしの心はパンク寸前だ。
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