運命みたいに恋してる。
そしたら、胸に押し当てていたスマホがまた振動して、あたしは慌てて電話に出た。


花梨ちゃんのおどけた声が聞こえてくる。


『もしもぉーし。七海ちゃん? お元気ですかー?』


「……ぷっ」


つい噴き出してしまったあたしの心は、大地のときとは違った温かさで満たされた。


花梨ちゃんも心配して電話してくれたんだね。ありがとう。


「体は元気だけど、心は色々と複雑でさ。絵筆を洗い終えたバケツみたいになってる」


『大地のこと? 話してスッキリすれば?』


「付き合ってくれるの? 長くなりそう」


『恋愛話にお付き合いするのが、女子同士のルールとマナーなんでしょ?』


「……へへ、そうでした。ではお言葉に甘えて」


あたしはベットに寝そべったまま、胸の内を吐き出し始める。


花梨ちゃんは何を指摘するでもなく、ただフンフンと相づちを打ちながら、聞いてくれている。


その静かな声を聞いて、あたしは癒され、女の子同士の夜が更けていく。


弱音吐いたり、唇を尖らせたり、笑ったり。


後悔とか、心配とか、感謝とか、好きだとか、様々なものがふわふわとシャボン玉みたいに浮かんで、弾けていくのを感じながら……。


あたしは、穏やかな眠気を感じ始めていた……。

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