運命みたいに恋してる。
いざ! と、一歩踏み出したとたんに、あたしのカバンの中のスマホが鳴った。


取り出してディスプレイを見ると、花梨ちゃんの名前が表示されている。


あ、いけない。着いたらすぐ連絡するって約束してたの忘れてた。


「もしもし、花梨ちゃん? 連絡遅れてごめ……」


『七海ちゃん! バレた!』


花梨ちゃんの叫び声が、スマホを通してキーンと耳に響いた。


ワンテンポ遅れて「へ?」と声を出すあたしの耳に、また花梨ちゃんのキンキン声が響く。


『おばさんたちにバレちゃったの! ぜんぶ!』


「な、なんでえ!? なんでバレたの!?」


花梨ちゃんに負けないくらい甲高い声を出すあたしに、花梨ちゃんがイライラした声で聞いてくる。


『あんたたち、学校になんて言って休んだの?』


スピーカー状態にしたスマホに向って、あたしと大地は正直に答えた。


「なにって、あたしは急性カタル性喉頭炎だから休みますって言った」


「俺は、急性カタル性胃腸炎だから休みますって言った」


『あんたたちってバカなの!?』


ますます花梨ちゃんの声が高くなる。


『なんでそんな、連携攻撃技みたいな病名にしたの!? それで先生たちに怪しまれて、あんたたちの親に確認の連絡が行ったんだよ!』


「げっ!? 先生、わざわざ家に電話なんかしたの!?」


『駆け落ちでナーバスになってた親たちが、学校に飛び込んで来たよ。おばさんたら、昨夜の七海の様子が明らかに不自然だったから、きっとなにかあったんだって取り乱しちゃって、大変だったんだから』


明らかに不自然? そんなぁ。あんなに頑張って自然にしてたのに。


いや、そもそも頑張ってる時点で、すでに自然じゃないか……。


「そ、それで?」


『それで先生たちが、どうやらお子さんたちは付き合っているらしい、って言っちゃったの』
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