運命みたいに恋してる。
「でも、いまさら行っても部屋の中には入れてもらえないぞ?」


「部屋になんて入らないもん。どこか盗み聞きできるような所を探すから」


「はあ?盗み聞き?」


大地の呆れた声を無視して、あたしは部屋に貼られている民宿内の見取り図の前に立った。


どこで待っても結果は同じなら、盗み聞きしてた方がよほど進歩的だ。


見つかって叱られたら、トイレ探してましたって言っときゃいいや。


「えっと、梅の間は……あった!」


「おい、七海」


「ふうん。襖で仕切られてる部屋なのか。襖に耳を押しつければ、中の音が聞こえるかな?」


「おいって」


「止めてもムダだよ。バレても大地は知らなかったことにしてればいいじゃん」


「俺も行く」


「へ?」


キョトンとするあたしの隣に立って、大地は見取り図を確認し始めた。


「方向オンチのお前がこんなの見たって、どうせわかんねえだろ?」


「一緒に来てくれるの?怒られるかもしれないのに」


「盗み聞きって方法が、お前らしくて逆に気に入った。俺も行く」


そう言って大地は、図面を見ながら楽しそうに笑った。


「たしかにこのまま黙って引っ込んでるなんて、向こうみずなお前らしくないもんな」


「どうせあたしは、見境いのない突っ走り屋ですよ」


「褒めてるんだよ。お前が向こうみずなのは自分に正直だからだし、人のために一生懸命だからだろ」
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