運命みたいに恋してる。
昔、お母さんが泣いていたのを見たことがある。


お父さんの位牌の前で、ひっそりと声を殺して泣いていた。


ヒザの上には貯金通帳とか、請求書とかが乗っかってた。


本当に大変だったから、お母さんは自分の人生を後悔してるのかもしれない。


お父さんとの思い出も、お姉ちゃんとあたしの存在も、お母さんは否定したいのかもしれない。


お母さんがお姉ちゃんの結婚を拒絶するたびに、あたしは、自分の存在を拒絶されてる気がするんだ。


ねぇ、お母さん。もしもタイムスリップできたらどうする?


お父さんにプロボーズされたときに。


お姉ちゃんやあたしを妊娠したときに。


そのときの自分自身に、いったいなんて言葉をかけるの?
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