運命みたいに恋してる。
「よく聞きなさい。お母さんはね、ちっとも不幸なんかじゃありません」


「大地、父さんもだ。自分を不幸とも思ってないし、ぜんぜん後悔もしてないぞ」


背筋を伸ばして断言するお母さんの顔を、あたしは両目をしっかり開いて見た。


次の言葉を食い入るように待つあたしたちに、お母さんとおじさんは、自分の思いを淡々と口にする。


「そりゃあ、お父さんが生きていてくれたらと何度も思ったわ。でもそれと後悔はべつの話よ」


「そうだ。逝ってしまったからといって、母さんと結婚しなきゃよかったなんて思ったことは一度もない」


「お父さんは本当に大切な存在よ。結婚したことを後悔するわけないでしょう?」


「いまでも母さんは、父さんの大切な妻なんだ」


とても穏やかな、でも堂々とした声。


あたしたちから決して視線を逸らさない、真っ直ぐな瞳。


嘘じゃない。嘘なんか言ってない。


お母さんとおじさんは、本当に結婚したことを後悔なんかしてないんだ。
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