運命みたいに恋してる。
「ねぇ、花梨ちゃん。あのカフェに入る？」


「うーん。すごく入りにくい」


花梨ちゃんが顔をしかめて言う通り。


どこからどう見ても、まるっきり普通の一軒家なんだもの。モロに他人様のご自宅。


いくら看板に『いらっしゃいませ』と書いてあっても、あれは入るのにかなり勇気がいる。


でも……。


「ね、せっかくだから入ってみない？」


あたしは花梨ちゃんの腕をつかんで立ち上がりながら、グイっと引っ張った。


逆に興味が湧いたよ。あそこまで入りにくいカフェって、中はどうなってんのかなぁ？って。


「えー？　入るのぉ？　嫌だ」


しぶる花梨ちゃんの腕を強引に引っ張りながら、あたしはジリジリと道路を渡って、着々と目的地に近づいた。


そしていよいよカフェの目前まで来て、やっと諦めたのか、花梨ちゃんの抵抗がピタッと止んだ。
< 26 / 267 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop