運命みたいに恋してる。
「あんときのヘドロの物体って、あんただったのぉ!?」


「ヘド……お前が言うな! お前が!」


叫び返す大地の声を、あたしは半分飛んだ意識で聞き流す。


頭が混乱しちゃって、もうワケわかんない。ちょ、ちょっと待ってよ。


「お前なあ! そりゃあドブから上がって最初に見たのは兄貴の顔だろうけど、だからって都合よく兄貴のことだけ記憶してんなよ! 助けた本人は俺だぞ!」


「ちょっと黙っててよ! 頭の中を整理してるんだから!」


あたしは怒鳴り声を上げながら、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。


あたしの命の恩人。十年経って再び巡り合えた、運命の王子様。


それは柿崎さんじゃなくて、目の前の、この……大地だったってこと?

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