運命みたいに恋してる。
あたしのことが好きって言ってたような気がするけど、願望のあまり幻聴が聞こえたのかな?


だって大地は……。


「お姉ちゃんのことが、好き、なんだよね?」


つっかえながら声を絞り出してそう聞くと、大地はあっさり否定した。


「いや。だってあれ、うそだから」


「うそぉ!?」


ますます頭の中が真っ白になって、クラクラしているあたしに、大地は気まずそうな顔で説明する。


「お前が俺の兄貴を好きだって知ったときに、とっさに考えたんだ。俺が一海さんを好きってことにすれば、共同戦線を張るって理由で、お前と一緒にいられるって」


……そういえば大地、なんだかすごく挙動不審だった。


計画変更とかブツブツ言って、その後すぐにお姉ちゃんが好きだって告白したんだ。


「一緒にいるうちに、絶対にお前を振り向かせるつもりだったんだ。その自信もあった」


「なにその、根拠のない自信は……」


「根拠はある! 兄貴はお前に恋していないけど、俺はお前に、こんなに恋してるんだからな。俺の熱意に引き寄せられないはずがない!」


やたら自信満々な態度に、あたしは絶句した。


そういえば、大地ってこういう人なんだよね。すっかり忘れてたけど。


「でも、でも、お姉ちゃんに褒められて、いつもデレていたよね!?」


「あれはデレてたんじゃない。好きな子の姉に愛想良くしていただけだ。それに未来の義姉になるかもしれない人だし」


まさかの、そんな理由?


じゃあ、あたしの嫉妬や悲しみやコンプレックスは、なんだったの?


本気で悩んだあの時間を返してほしい!


「一海さんから初めてお前の写真を見せられた日からずっと、お前のことが妙に気になっていたんだ。もしかしたら俺も、十年前の女の子だって無意識に気づいていたのかもしれないな」


目の前の川を懐かしそうに眺める大地の目は、とても純粋で、冗談を言っているようには見えない。


その横顔を見ているうちに、だんだん胸が熱くなってきた。


あの運命的な出来事が、大地の心にもしっかりと刻まれていたんだね。
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