運命みたいに恋してる。
「向こうにドアがあるけど、その奥がスタッフルームかな?」


玄関とは反対側に、閉ざされたドアが見える。ふたりでしばらくそのドアを眺めていたけれど、誰もこっちに来る気配はない。


「あの、すみませーん」


遠慮がちに声をかけてみたけれど、なんの反応もなし。


困ったな。帰ろうかな。でもせっかく入ったんだし、疲れてるからなにか飲んで休みたい。


それに帰るにしたって、ここがどこだかわからないもん。お店の人に聞かなきゃ帰れない。


……よし! ここはあたしが責任を持って、状況を打破せねば!


「ちょっと七海ちゃん。勝手にドアを開けるつもり? 失礼でしょ?」


イスから立ち上がってドアに向かうあたしを、花梨ちゃんが慌てて制止しようとした。


「でもドアには立ち入り禁止とは書いてないし。お店なのに呼んでも誰も出てこないんだから、失礼の度合いで言えばどっちもどっちでしょ? 怒られたら素直に謝ればいいよ」


そう言いながら、あたしがドアのノブに手を掛けて回そうとしたその瞬間……。


―― ゴンッ!


なんと、いきなりドアが向こうから開いて、勢いよくあたしの顔面に激突した!
< 29 / 267 >

この作品をシェア

pagetop