運命みたいに恋してる。
なのに、どうしてこんなことになっちゃったのかな?


これまでケンカはしても、お姉ちゃんに対してこんな黒い感情を抱いたことなんて一度もなかったのに。


お姉ちゃんとの関係が、大切な絆が変わってしまいそうで怖いよ……。


「あたしもね、まさか自分に恋人ができるなんて思ってもいなかったのよ」


『恋人』


恥ずかしさと喜びの入り混じった声で言われたその単語が、あたしの胸に鋭く突き刺さった。


グッと歯を食いしばって耐えるあたしの耳に、お姉ちゃんの残酷な言葉が次々と入り込んでくる。


「拓海と出会って、ドキドキしている自分に気がついたの。そんな自分が不思議で、でもドキドキは止まらなかった」


聞きたくなくて、耳を両手で覆ってしまいたかった。


お姉ちゃん、やめて……。


「そしたら拓海が、あたしのことを『好きだ』って言ってくれたの。とても嬉しかったわ」


もう、やめて。お願いだからやめて。


「一度は断ったのよ? あたしは体が弱いからきっと迷惑をかけるって。でも彼、『僕は諦めない』って言ってくれたの」


やめて!


柿崎さんがお姉ちゃんにささやいた、愛の言葉を言わないで!


ふたりが、いかに強く結ばれているかを聞かせないで!


もう、わかったから。充分にわかったから……だから……。


「今でも拓海には迷惑をかけそうで怖いけれど、告白されたときに思い出したの。七海の『きっと大丈夫』って魔法の言葉を」


「……え?」


お姉ちゃんがあたしの手をそっと握って、あたしは、やっとお姉ちゃんの目をまともに見た。
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