運命みたいに恋してる。
「魔法の言葉って?」


「七海、覚えてる? 小学校からの帰り道で急にあたしの具合が悪くなって、まともに歩くこともできなくなったときのこと」


……あぁ。そういえばそんなことがあった。


お姉ちゃんが六年生で、あたしがまだ一年生だったとき。ふたりで帰っている途中で、お姉ちゃんが貧血を起こして倒れかけたんだ。


たまたま周りに誰もいなくて、すごくあせった記憶がある。


「七海が、ふたり分のランドセルも道具類も、ぜんぶ持ってくれたよね。小さな体でフラつきながら、『大丈夫だよ、お姉ちゃん』って、ずっと励ましてくれた」


「……うん。あのときお姉ちゃん、大変だったね」


「それに、お母さんが残業でいなかった夜に熱が出たときも、七海が氷枕を用意してくれた。飲み物も買ってきてくれて、あたしが吐いたものも処理してくれた」


そういうことはよくあったなぁ。


ひどい顔色でベッドに横たわっているお姉ちゃんを見て、このまま死んじゃうんじゃないかと本気で心配したなぁ。


「あたしね、ずっと七海の声に励まされていたの。『大丈夫だよ、お姉ちゃん。あたしがついてるから大丈夫だよ』って。まるで魔法の言葉みたいだった」

< 53 / 267 >

この作品をシェア

pagetop