運命みたいに恋してる。
「わざわざマフラーを返しに来てくれたの? ありがとう」


「いや、こちらこそ。それよりお前、どうしたよ?」


「え? どうしたって、なにが?」


「泣いてんじゃん。なにかあったのか?」


心配そうに聞かれて、自分がモロに泣き顔だったことにやっと気がついた。


うわ、恥ずかしい! よく知りもしない男の子に泣き顔を見られた!


慌てて下を向いて顔を隠すあたしに、イケメン君が朗らかに声をかけてくる。


「べつに恥ずかしがることないだろ? あ、そうだ」


イケメン君が制服のポケットからグレーのハンカチを取り出して、その手をこちらに向けてきた。


ハンカチ、貸してくれるつもりなのかな? さすがイケメンは紳士的だな。


……って感心していたら、彼がそのハンカチであたしの頬をそっと拭いたもんだから、ビックリして声を上げてしまった。


「な、なに⁉︎」


「あのときのお返し。あんたも俺の制服、拭いてくれただろ?」


そう言ってイケメン君は、まるで壊れ物にでも触れてるみたいに、そーっとあたしの頬を拭いている。


いや、あなたそんな普通な顔してるけど、これは普通じゃないですよ!?


少なくともあたしは、男の子に涙を拭いてもらうなんて、生まれて初めての体験なんだけど!


ビックリしすぎて涙も引っ込むよ!


てか、どうしよう! めっちゃ恥ずかしくて顔が火照ってきちゃった!
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