運命みたいに恋してる。
「も、もういいから!」


そう言って後ろに一歩下がっても、イケメン君のハンカチが追いかけてきて、あたしの頬に残った涙を一生懸命に拭いている。


「遠慮すんなよ。これは恩返しなんだし、泣いてる女の子を放っておけない」


いかにもイケメンなセリフが、ぜんぜん違和感ないのがすごい……。


女子たちが騒ぎたてるほどのイケメン君に、優しく涙を拭かれるとか、あたしは少女マンガの世界にトリップでもしたの?


ポーッとして見上げる顔は、まさしく女の子の理想を描いた少女マンガのヒーローのような美麗さだ。


「泣きやんだみたいだな。よかった」


イケメン君の安心したような声に、あたしはハッとした。


やだ。つい放心してたけど、そういえば泣き顔を見られているんだった。


急いでクルリを背中を向けて顔を隠すと、イケメン君が横からヒョイと覗き込んでくる。


「み、見ないでよ」


「なんで?」


「泣き顔、見られたくないから! 泣き顔ってブスなんだもん!」


こんな芸術品みたいに綺麗な顔の男子に見られるなんて、我慢できない。


あたしにも一応、女の子としての羞恥心くらいはあるんだもん。


「安心しろよ。お前はブスじゃない。それどころか、すごくかわいいから」


「……はあ!?」


まさかの発言に羞恥心も吹っ飛んで、勢いよく振り向いた。


ふ、ふざけてるの⁉︎


あたしが、かわいいわけないじゃん!
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