運命みたいに恋してる。
「からかわないで!」


「からかってねえよ。だってお前がかわいいのは事実じゃん」


「ま、またそんなふざけたセリフを、そんな真面目な顔して……!」


冗談を言われているとわかっていても、『かわいい』って言われるたびに心が勝手に反応してドキドキする。


あたしの顔は火がついたように熱くなっていて、頭から湯気が出そうだ。


「お前、かわいいよ。一海さんがいつも自慢してる通りだなって思った」


「また『かわいい』なんて冗談言ったら……え?」


グーパンチを食らわすぞー!って言おうとして、振り上げた拳をピタリと止めた。


『一海さん』って言ったよね? 


なんでお姉ちゃんの名前を? しかもずいぶん親しそうな口ぶりじゃない?


「あたしのお姉ちゃんを知ってるの?」


するとイケメン君は、待ってましたと言わんばかりの表情でニヤッと笑った。


「俺の名前は柿崎大地(かきざきだいち)。柿崎拓海は俺の兄貴だ」


「ええぇーー!?」


驚きのあまり、ひっくり返りそうになった。


この人、柿崎さんの弟だったのか!


うわ! ぜんっぜん似てない!


だってお兄さんは肌も髪も色素が薄くて、ふんわりとした癒し系。


でもこの人は、顔つきも、持ってる雰囲気も華やかで、いわゆるカリスマ的なリーダー気質を感じる。


なんとも真逆なタイプのイケメン兄弟だ。


「入試のときに俺は気がついたけど、あんたは俺を知らないみたいだから、そのままにしておいた」


そういえば、あたしが話しかけたときに、すごく驚いた顔してたっけ。


それにしても、まさか柿崎さんの弟があたしと同じ学校に通っていたなんて、夢にも思わなかった。


すごい偶然に親近感が湧いてきて、つい口調も弾む。
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