32日日記
「大っ嫌いー!みんな、嫌いー!」
空に向かって、叫んだ。
神様に聞こえるかな…?
私の訴え、届くかな…?
そのままコンクリートに座り込んだ。
ひんやりとした冷たさが肌に伝わる。

「あのさ、」
不意に後ろから声がした。
私は首だけ振り向く。
そこには、いかにも不良って感じの男子が立っていた。
「さっきから、うるさいんだけど」
一瞬、何のことかわからなかったけど、すぐにわかった。
「ごめん、なさい」
叫んだ私が悪いんだよね。
「別にいいけどさ」
そういうと、彼は大の字に寝転んだ。
大きい二重の目。少し茶髪で癖っ毛の髪。整った眉。少し高めの鼻。綺麗な唇。
どこから見ても綺麗な顔立ちをしている、不良には勿体ないくらいの美男子。
そんな彼をボーっと見ていた。
「あんた、名前は?」
私の視線に気づいたのか、彼は身体を起こして私を見た。
「瑞姫。新崎 瑞姫」
「へぇー。瑞姫って名前かぁ」
「あなたは?」
そう言うと彼は、頭を掻きながら「平岡 修太」と答えた。
ーひらおか しゅうたー
名前を聞いて、ハッとした。
「俺の名前聞いて、ビビらない奴なんて初めてだな」
彼は口角を少し上げた。
「別に怖くないし」
私は顔を逸らす。
平岡修太に会うなんて、私はついていない。
彼は、学校一の不良で、他校の生徒を半殺しにしたという噂が流れる程の悪い奴。
「あっそ」
平岡修太は、また大の字に寝転んだ。
私はまた正面を向く。

どうにかして逃げないと…
私の頭には、逃げることしかなかった。
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