おやすみ、先輩。また明日


「山中さんは誰かに食べてもらいたいって、思わない?」


「お、思わないよ!」


「そっかあ。でもいつか、そう思う日が来るかもしれないよ」



好きな人じゃなくても。

家族や、友だちのような、大切な人に食べてもらいたいと思う日が。


それはきっと、料理の大変さと楽しさに繋がる。


料理をがんばれば、誰かに食べてもらいたくなって。

そして誰かに喜んでもらえたら、料理がきっと楽しくなる。




「えらい、桜沢! よく言った~! そうだよなあ。人に食べてもらうって、凄いことだよ、ほんと!」



須賀ちゃんはそう言ってくれたけど、山中さんは唇を噛みしめてうつむいていた。


納得はしてくれていないんだと思う。

だとしても、わたしは何度だって、胸を張って今日と同じことを言うだろう。



もう迷わない。

わたしはそう決めたんだ。











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