おやすみ、先輩。また明日
部活のあと、わたしは1人駅までの道を歩く。
山中さんはあのあと何も言わず、肩を怒らせて先に帰っていってしまった。
良ければ一緒に帰らない?
そう言うつもりだったのに、声をかける暇もなかった。
いつか、この道を彼女と歩く日は来るのかな。
いや、きっと来る。大丈夫。
駅に着き、ホームへの階段を上っていると、背中に声がかけられた。
「お疲れ、くるくる」
好きな人の声。
好きな人だけが呼ぶわたしの名前。
反射的に勢い良く振り返って、直後笑顔が固まった。
「……何、その顔。俺って嫌われてる~」
ヤンキー先輩は1人じゃなくて、宇佐美先輩も一緒だった。
この二人は本当にいつも一緒にいる。
しょっちゅう言い合いしてるのに、なんだかんだ仲良いんだ。
「先輩たちは何してたの?」
「ゲーセン。ウザミが格ゲー弱いくせにしつこくてな」
「はー? 藤だって麻雀弱いくせに諦め悪かったじゃん」