おやすみ、先輩。また明日


後輩として可愛がってもらってる。

それ以上なんてないのに、それ以上を望みたくなる。



「あ、あのねヤンキー先輩! わたし今日おやつにと思って用意してたやつ持ってきたの。あとでランの外で食べようね!」



涙を体の中に押し戻して、わたしは元気いっぱいの笑顔を先輩に返した。



このあとの夏休みにも、ヤンキー先輩に会える。


それだけでわたしは充分幸せ。





しばらくそうして何を話すでもなく、走り回るアンコちゃんや他の犬たちを2人で眺めた。


無言が苦痛じゃない。

むしろ心地良い。


いつもよりちょっと早い自分の鼓動すら。



学校のこと、部活のこと、宇佐美先輩のこと、ヤンキー先輩の彼女のこと。

全部忘れて、ただのんびりと、この時間を楽しんだ。



どれぐらいそうしていただろう。

喉が渇いてきたなと思った時、



「アン!」


「はいっ!?」


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