おやすみ、先輩。また明日
そんなどうでもいい話をしながら、ホームに滑り込んできた電車に乗って、さっき通り過ぎた駅へと向かう。
電車の中でも、座席に並んで世間話をした。
ヤンキー先輩が飼っているトイプードルの写メを見せてもらったり、
わたしが調理部に所属していて、お菓子作りを専門にしている話しをしたり、
甘い物が苦手らしい先輩にそれで顔をしかめられたり。
予想外に、ヤンキー先輩は気さくでとても話しやすい人だった。
顔怖いのにね~。
「そんじゃ。遅刻させて悪かったな」
「いえ、こちらこそ」
そう言って生徒玄関で別れてから気付いた。
ヤンキー先輩の名前を聞きそびれたことに。
そういえば、わたしも名乗ってないや。
まあいいか。
同じ学校なわけだし、電車も同じみたいだから、また会えるだろう。
そう考えて教室への階段をのぼりながらふと、
わたしはなぜまたヤンキー先輩に会いたいと思っているんだろう?と、首を傾げた。