おやすみ、先輩。また明日


「生意気~。でも嫌いじゃないよ。俺は麻美ちゃんより杏ちゃんの方がわりと好きかもね」


「へ?」



冗談だろうけど、その時の宇佐美先輩があんまり優しい表情をしていたから、わたしは笑うこともできなくて。

呆然と、ただ彼の整った顔を見上げた。


だってわたしは針の穴の外なはずだから。



「なに? 俺に惚れた? ま、俺は特定の彼女とかいないし、藤に虚しく片想いしてるより、よっぽど健全だと思うけど」


「それはないです!」


「うわ~。杏ちゃんのくせに、ほんと生意気」


「ふぎゃっ」



お仕置きとばかりに、わたしの鼻をむぎゅっと摘まんで笑うと、宇佐美先輩はヤンキー先輩を追いかけていった。


もう、なんなの。

宇佐美先輩って、本当に何を考えているのかわからない人だ。



摘まれてじんじんする鼻を押さえながら、わたしも2人に続いてランへと向かった。




< 133 / 356 >

この作品をシェア

pagetop