おやすみ、先輩。また明日
「生意気~。でも嫌いじゃないよ。俺は麻美ちゃんより杏ちゃんの方がわりと好きかもね」
「へ?」
冗談だろうけど、その時の宇佐美先輩があんまり優しい表情をしていたから、わたしは笑うこともできなくて。
呆然と、ただ彼の整った顔を見上げた。
だってわたしは針の穴の外なはずだから。
「なに? 俺に惚れた? ま、俺は特定の彼女とかいないし、藤に虚しく片想いしてるより、よっぽど健全だと思うけど」
「それはないです!」
「うわ~。杏ちゃんのくせに、ほんと生意気」
「ふぎゃっ」
お仕置きとばかりに、わたしの鼻をむぎゅっと摘まんで笑うと、宇佐美先輩はヤンキー先輩を追いかけていった。
もう、なんなの。
宇佐美先輩って、本当に何を考えているのかわからない人だ。
摘まれてじんじんする鼻を押さえながら、わたしも2人に続いてランへと向かった。