おやすみ、先輩。また明日

お気に入りのシャツだっただけにショックは大きい。



「やだ!」



わたしが泣きそうになっていると、目の前の女の人が短く悲鳴を上げた。

顔を上げると、そこにいたのはどうやったのかというくらい髪を盛りに盛った、派手なメイクのギャルだった。



「ワンピ汚れちゃったじゃん!」



よく見ると、彼女が着ているミニのワンピの裾に、ちょんと小さな茶色いシミ。

わたしが落としたたこ焼きが、彼女の服にもついちゃったんだ。



「ご、ごめんなさい!」


「ごめんじゃないし~!最低!」


「本当にすみません! クリーニング代を……」


「何やってんのー? ……あれ?杏ちゃん?」



ぺこぺこ頭を下げていたら、聞き覚えのある声に名前を呼ばれて。


勢い良く顔を上げたら、そこには前髪を可愛らしくピンで留めた宇佐美先輩がいた。

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