おやすみ、先輩。また明日
千円札を数枚彼女に渡して、万人受けしそうな綺麗な笑みを作る宇佐美先輩。
彼女の頬が染まるのをわたしは間近で目撃する。
この人はこうやって女の人を手のひらの上で転がしているのかなあ。
そんな失礼なことを考えてしまった。
わたしのことを助けてくれてるのに。
なんて冷たい奴だ、桜沢杏。
「も~。しょうがなないなあ。屋台物じゃやだよ? 美味しいもん奢ってよね!」
「りょーかい。俺ちょっとこの子と話してるから、皆と先に行っててよ」
「早くね~?」
さっきまで怒っていたのに、彼女は上機嫌で走っていった。
その先には立ち止まってこっちを見ていた、5人くらいの男女のグループ。
なんだ、デートじゃなかったんだ。
「大丈夫? 杏ちゃん」
「あ。は、はい。宇佐美先輩ありがとうございました。これ、さっきのクリーニング代」
「いーよいーよ。気にしないで」
「そういうわけには」